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残業代請求用語集

◆サービス残業
サービス残業とは、その名の通りサービスで行われる残業代の発生しない時間外労働のことをいいます。
厳密にいうと、残業代の発生しない時間外労働は存在しないため、表向きは労働していないこととしながら、実際には時間外労働をしている状態となります。
「賃金不払残業」ともいいます。
たとえば、勤怠管理を自己申告制で行っている会社で、労働者が労働時間を現実より過少に申告する場合は、典型的なサービス残業にあたります。
このようなサービス残業が社会問題となったことから、平成13年に出された労働基準局長通達「労働時間の適正な把握のための使用者が講ずべき措置に関する基準」によって、例外的な場合にのみ、勤怠管理を自己申告制で行うことが認められる形となりました。
さらに、例外的に自己申告制を導入する場合でも、
(1)労働者に対して、適正に自己申告を行うことについて十分な説明を行うこと
(2)必要に応じて実態調査を実施すること
(3)適正な申告を阻害するような措置を講じてはならないこと
を条件としており、適正な労働時間の管理を徹底しようとしていることがわかります。
◆裁量労働時間制
裁量労働時間制とは、一定の業務に従事する労働者について、実際の労働時間にかかわらず、労働時間をみなし時間で計算する制度のことをいいます。
本来、労働時間は実際に労働した時間で計算しますが、業務の種類によっては、その遂行方法や労働時間を労働者の裁量に委ね、みなし時間で計算するほうが適切な場合があり、労働の量だけではなく、質や成果も考慮する時代の流れから導入されたものです。
裁量労働時間制では、使用者は業務の遂行方法や時間について具体的な指示を行わない点に特徴があり、専門的な職種(研究開発職、デザイナー、税理士等一定の職種)についての「専門業務型」と事業の運営について企画,立案等の業務に従事する場合の「企画業務型」の2種類があります。
これらは、「みなし労働時間制」の1種ですが、みなし労働時間制には、ほかにも外回りの営業や新聞記者など、主に社外で働く「事業場外労働」を対象としたものもあります。
なお、この制度は労働時間をみなし計算するだけですので、みなし時間が法定労働時間を超える場合や深夜業になる場合には別途割増賃金が必要です。
また、休憩や休日に関する労基法の規定も適用があります(昭和63年1月1日基発1号)。 ◆時間外労働
時間外労働とは、1日または1週間の法定労働時間を超える労働のことをいいます。
法定労働時間は、労働基準法32条に規定されており、1日につき8時間、1週間で40時間と定められており、これを超える労働が時間外労働となります。
労働契約によって定められた労働時間のことを所定労働時間といい、労働基準法においては、所定労働時間を超えても法定労働時間を超えなければ、原則として割増賃金を支払う必要はないとされています。
したがって、たとえば1日6時間、1週間で30時間労働するという労働者の場合、この労働者が毎日2時間残業をしたとしても、通常の給与体系に基づいた残業代は受け取ることができますが、労働基準法37条のいわゆる割増賃金の請求はできないこととなります。
もっとも、現実には、時間外労働を含む所定外労働について、自己申告制のもと実際よりも過少に申告すること等による「サービス残業」の広がりが指摘されており、労働者が労働の対価をきちんと受け取れる環境作りが必要とされています。
◆時間外割増賃金
時間外割増賃金とは、時間外労働の対価として支払うべき割増賃金のことをいいます。
法律で定められた労働時間を超える労働となるため、通常の賃金に比較して割高な賃金を支払うこととされており、労働基準法37条に規定されています。
肝心の割増率についてですが、時間外労働の場合、原則として25%以上の割増率で計算され、週60時間を超える部分については、50%以上の割増率で計算されることとされています(ただし、50%以上の割増率に関しては、しばらくの間、中小企業への適用は猶予されています)。
また、時間外労働がほかの賃金割増要因である深夜労働・休日労働と重ねて行われていた場合、その分も合わせて請求できることになります。
たとえば、週60時間を超える労働が深夜に行われていた場合には、深夜割増の25%以上に、時間外割増の50%以上を足して、割増率は75%以上となります。
法律で定められた労働時間は、就業規則などにより延長することは認められていないため、1日8時間、1週間で40時間以上労働している場合は、きちんと残業代が割増で支払われているかをチェックしてみる必要があります。
◆名ばかり管理職
名ばかり管理職とは、形式的には管理職に該当するように見えるものの実質的な側面から労働基準法の管理監督者にあたらないとされる人のことをいいます。
労働基準法の管理監督者とは、「監督もしくは管理の地位にある者」(労働基準法41条22号)のことであり、これらの者には、労働時間に関する規制が適用されません。
したがって、管理監督者は、残業をしても残業代が支払われないサービス残業をすることになります。
これは、管理監督者は経営者と一体的な立場にあることから労働者に関する労働時間についての規制が馴染まないと考えられているからです。
ところが、労働の実態に照らして、労働者に関する労働時間についての規制をおよぼすべき管理職は、相当数存在します。
たとえば、時間管理を受けているファミリーレストランの店長やカラオケ店の店長については、裁判例で管理監督者にあたらないと判断されています。
名ばかり管理職についての有名な問題として、「マクドナルド事件」があります。
この事件では、店長の労働の実態が、顧客対応(レジ打ち、品出し、金銭のやり取り)であり、管理監督者としての仕事をほとんど行っていなかったことから、管理監督者にはあたらないと認定されています。
◆付加金
付加金とは、労働者が使用者に対して、解雇予告手当、休業手当、時間外労働手当、年次有給休暇中の手当などを請求したにもかかわらず、使用者がそれを支払わない場合、裁判所が、この未払い金のほかに、これと同一の金額を使用者に支払わせるものです。
これは裁判所の判断に基づく一種の民事制裁制度です。
たとえば、休業手当を10万円支払わなければならないにもかかわらずまったく払おうとしない使用者がいた場合、裁判所は、その倍額の20万円を支払うよう命じることができます。
ただし、付加金の支払を命じるか否かは、裁判所の裁量で決まるものなので、必ず支払命令が行われるわけではないという点に注意が必要です。
また、この請求は違反のあった時から2年以内にしなければならない点にも注意が必要です。
このような付加金を請求する際には、まず弁護士に相談することをおすすめします。

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