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労働問題用語集

◆解雇禁止期間
解雇禁止期間とは、労働者が仕事中のケガや病気,また出産などで休業が必要となった場合に、その労働者の解雇を禁止する期間のことをいいます。
使用者は、労働者が仕事を行ううえで負傷を負ったり病気にかかったりした場合、その療養のために休業する期間およびその後30日間はその労働者を解雇することはできません。
また、女性労働者が産前産後休暇によって休業する期間およびその後30日間も解雇することはできません(労働基準法19条1項)。
このように休業中の解雇が禁止されることにより、労働者は安心して病気の療養等のために仕事を休むことができるのです。
なお、使用者が解雇される労働者に対して打ち切り補償を支払う場合や天災事変(たとえば地震など)等やむを得ない事情のために事業継続が不可能となり、その事情について労働基準監督署長の認定を受けた場合には、解雇は認められます(同条1項但書・2項)。
◆解雇権の濫用
労働契約法16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められています。すなわち、普通解雇が解雇権の濫用として無効となる場合があることが、明文上認められているのです。
解雇は、労働そのものをはく奪するものであることから、それを行う場合は重大な理由がなければならないとされています。使用者が一方的に労働者を解雇する不当解雇は認められていません。
たとえば、解雇理由が労働者の能力や適格性に起因するものである場合、勤務成績や勤務態度が著しく不良であることまで要求されることがあります。また、懲戒事由にもなる非違行為(業務命令違反等)を理由とする場合には、それが重大であることが要求されることもあります。
そのような条件を満たさず一方的に解雇を行った場合には、解雇権の濫用として解雇が無効となることがあります。「ちょっと気に入らないからすぐ解雇」ということにはできないのです。
◆対価型セクシャルハラスメント
対価型セクシャルハラスメントとは、労働者の意に反する性的な言動がなされ、その言動に対する労働者の対応によって、その人が解雇、降格、減給などの不利益を受けることいいます。
対価型セクシャルハラスメントは、(1)性的な関係を持つことを良い成績評価を与える条件とする「代償型」、(2)性的な関係を拒まれた場合、労働条件で不利益な扱いをする「報酬型」、(3)相手が断れない弱い立場にあることを利用して、性的な関係を持つことを強要する「地位利用型」の3つの分類に分けられます。
たとえば、性的な関係を拒んだことを理由に解雇された報酬型の場合、正当な理由のない解雇(不当解雇)ですので、解雇は無効になりますし、解雇の違法性が著しい場合には、雇用主に損害賠償を請求できる可能性もあります。
なお、セクシャルハラスメントには、対価型セクシャルハラスメントのほかに、環境型セクシャルハラスメントがあります。
◆環境型セクシャルハラスメント
環境型セクシャルハラスメントとは、労働者の意に反する性的な言動により、就業環境が不快なものとなり、就労意欲が低下し、能力の発揮に重大な悪影響が出るなど看過できない支障が出ることをいいます。
たとえば、上司が労働者の腰や胸等をたびたび触ったり、性的な経験の有無を尋ねたり、労働者の抗議にもかかわらず、職場にヌードポスターを掲示し続けることにより、労働者が苦痛を感じ、就業意欲が低下する場合があげられます。
環境型セクシャルハラスメントの場合、対価型セクシャルハラスメントと異なり、はっきりとした経済的な不利益を伴いませんが、男女雇用機会均等法は、対価型と同様に、雇用主の雇用管理上の措置義務を定めています。
その内容は、(1)セクシャルハラスメントに関する会社の方針(行為者を懲戒処分の対象にすること)を明らかにする、(2)会社内外に相談窓口を設ける、(3)相談後の迅速な対応(事実関係を確認し、行為者を適切に処分し、被害者に対する配慮を行う)をすることです。
なお男性に対するセクハラも保護の対象とされており、環境型セクシャルハラスメントが行われたことにより被害者が精神的な苦痛を受けた場合、行為者や会社は、被害者に対して損害賠償責任を負う場合があります。
◆パワーハラスメント(パワハラ)
パワーハラスメントとは、職権などの優位にある権限を背景に、本来の業務を超え、継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、就労環境を悪化させ、職場内に不必要な緊張感や雇用不安を与えることいいます。
「パワハラ」と省略して呼ばれることが多いです。
たとえば、(1)「無能」「給料泥棒」など人格を否定する叱り方をする、(2)ほかの社員の前で、大声で何回も非難する、(3)椅子を蹴飛ばしたり、書類を投げつけるなど、威圧的な態度を示す、(4)実現不可能な業務を指示し、それができないことを理由に叱責する、(5)能力に応じた仕事を与えない、(6)休日、上司の家を掃除させるなど仕事以外の事柄を強要することなどが挙げられます。
パワハラがあった場合、行使者だけでなく、会社も損害賠償責任を負う可能性があります。なぜなら、会社は労働者にとって働きやすい環境を保つように配慮する義務を負っているからです。またパワハラによる自殺について、労災が認められた事例もあります。
◆労働条件の不利益変更
労働条件の不利益変更とは、労働契約を結んだ後で、労働者に不利益となるような内容に労働条件を変更することをいいます。
労働者と使用者は、雇用契約を締結する際に、賃金や業務内容、勤務地などの労働条件について、双方の合意によって決定します。
その労働条件が、後になって使用者側から一方的に変更されてしまうと、生活が不安定になり、労働者は落ち着いて仕事をすることができません。そのため、法律では、この労働条件について、使用者が一方的に、労働者にとって不利益となる内容に変更することができないよう、さまざまな規制をしています。
具体的には、使用者と労働者が労働条件の変更に合意した場合はいいのですが、そうでない場合には、就業規則や労働協約の変更を行わなければなりません。
就業規則等を労働者にとって不利益に変更するためには、変更の必要性があることや、その変更によって労働者が被ることになる不利益の内容や程度、変更後の就業規則の合理性などを総合的に判断して、相当と認められなければなりません。そうでない場合,就業規則等を労働者にとって不利益な内容に変更することは許されないのです。
このように、労働条件の不利益変更にはさまざまな制約が課せられているにもかかわらず、経営悪化などを表向きの理由として、給与の削減など一方的な変更を行う企業も少なくありません。


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